text:chomonju:s_chomonju246
古今著聞集 管絃歌舞第七
246 管絃はよくよく用心あるべきことなり・・・
校訂本文
管絃はよくよく用心あるべきことなり。
前筑前守兼俊1)、殿上に笙吹きなきによりて、昇殿を免(ゆる)さるべきよし、沙汰ありけり。
まづ試ありける日、蚶気絵(きさきゑ)を賜ひて吹かせられけるに、用心なくして吹き出だしけるほどに、管中に平蛛(ひらぐも)のありけるが、喉に飲み入れられにけり。むせては吐(つ)きまどひけるほどに、主上・群臣も笑ひ給ひて、腸(はらわた)を断ちけり。おほきに嗚呼(をこ)を表はして、昇殿の沙汰もとどまりにけり。
かかるためしあれば、ことにおきてよくよく用心あるべきことなり。なかにも御物の常にも吹かれざらむをば、まづ小息にて試みるべきなり。
翻刻
管絃はよくよく用心あるへき事也前筑前守兼俊殿上 に笙吹なきによりて昇殿を免さるへきよし沙汰ありけり まつ試ありける日きさきゑをたまひてふかせられける に用心なくして吹出しける程に管中に平蛛のありける か喉にのみ入られにけりむせてはつきまとひける程に主上/s164l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/164
群臣もわらひ給て腸を断けりおほきに嗚呼を表し て昇殿のさたもととまりにけりかかるためしあれは事に おきて能々用心あるへき事也なかにも御物のつねにも ふかれさらむをは先小息にて心見るへきなり/s165r
1)
源兼俊
text/chomonju/s_chomonju246.txt · 最終更新: 2020/03/28 19:03 by Satoshi Nakagawa