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古今著聞集 管絃歌舞第七
233 同じき二十一年十月十八日八条大将(保忠)中納言の時勅をうけ給ひて・・・
校訂本文
同じき1)二十一年十月十八日、八条大将(保忠)2)中納言の時、勅をうけ給ひて、日ごろ奏せらる舞を御覧ぜられけり。貞信公3)、右大臣にて参り給ふ。参入音声(まゐりおんじやう)には、聖明楽(せいめいらく)をぞ奏しける。刑仙楽・西河・蘇志摩(そしま)・傾坏楽(けいばいらく)・放鷹楽(はうようらく)・弓士(きゆうし)・採桑老(さいさうらう)・林歌(りんが)・蘇莫者(そまくしや)・泔州(かんしう)・胡飲酒(こんじゆ)・輪台(りんだい)・甘酔(かんずい)、これらを御覧ぜられけり。
この中、雅楽属(うたのさくわん)船木氏有は放鷹楽を奏しけり。帽子に摺衣(すりごろも)をぞ着たりける。舞の間に、心にまかせて鳥を捕らせければ、見る者目を驚かしけり。犬飼一人を具したりけり。これは、もとよりあるべきものにはあらざることとかや。
この舞、承和に奏したりける。その後聞こえず。この装束、中納言ぞ調ぜられける。舞の後、中納言、庭に下りて4)氏有が捕らする所の 鳥を取りて、膳部(かしはで)に賜はせけり。その日の舞人、百雄5)・氏有・峰吉6)、勧賞(けんじやう)をかぶりけり。峰吉は篳篥(ひちりき)の上手にて賞をかうぶり、大臣(おとど)は和琴(わごん)をぞ調べ給ひける。
翻刻
主童親王の御時の例とて沙汰ありける同廿一年十月十八日 八条大将(保忠)中納言の時勅をうけ給て日比奏せらる舞を御 覧せられけり貞信公右大臣にてまいり給参入音声には聖 明楽をそ奏しける刑仙楽西河蘇志摩傾坏楽放鷹楽弓 士採桑老林歌蘇莫者泔州胡飲酒輪臺甘酔これらを御 らむせられけりこの中雅楽属船木氏有は放鷹楽を奏しけり 帽子に摺衣をそきたりける舞のあひたに心にまかせて鳥を とらせけれは見る物目を驚かしけり犬飼一人をくしたりけり これはもとよりあるへき物にはあらさる事とかや此舞承和 に奏したりけるそののちきこえすこの装束中納言そ/s159l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/159
調せられける舞の後中納言庭におもて氏有かとらする所の 鳥をとりて膳部にたまはせけり其日の舞人百雄氏有峯 吉勧賞をかふりけり峯吉は篳篥の上手にて賞をか うふりおととは和琴をそしらへ給ける/s160r
text/chomonju/s_chomonju233.txt · 最終更新: 2020/03/22 19:11 by Satoshi Nakagawa