text:chomonju:s_chomonju228
古今著聞集 和歌第六
228 成源僧正は連歌を好む人にてその房中の者どもみなたしなみければ・・・
校訂本文
成源僧正は連歌を好む人にて、その房中の者ども、みなたしなみければ、中間法師常在といふあやしの者まで、かたのごとく連ねけり。
法勝寺の花の盛りに、件(くだん)の常在法師、糸桜のもとにたたずみて侍りけるを、若き女房四・五人。花見て侍りけるが、この法師を見て、「あれも人並みに花見んとてあるにや」なんど嘲(あざけ)りつつ、「や御房、この花一枝折りて賜びてんや」と言へりければ、この法師、うち案じて、
山賤(やまがつ)はをりこそ知らね桜花咲けば春かと思ふばかりぞ
と言ひかけたりければ、笑ひつる女房ども、いらふることなし。あきれてぞ立てりける。
翻刻
成源僧正は連哥をこのむ人にて其房中のものとも みなたしなみけれは中間法師常在といふあやしの物ま/s157r
てかたのことくつらねけり法勝寺の花のさかりに件 常在法師いと桜のもとにたたすみて侍けるをわかき 女房四五人花みて侍けるかこの法しをみてあれも人な みに花みんとてあるにやなむとあさけりつつや御房こ の花一枝おりてたひてんやといへりけれはこの法し うちあんして 山かつはおりこそしらねさくら花さけは春かと思ふはかりそ といひかけたりけれはわらひつる女房ともいらふることなし あきれてそたてりける/s157l
text/chomonju/s_chomonju228.txt · 最終更新: 2020/03/21 12:55 by Satoshi Nakagawa