text:chomonju:s_chomonju199
古今著聞集 和歌第六
199 亭子院鳥養院にて御遊ありけるに・・・
校訂本文
亭子院1)、鳥養院(とりかひゐん)にて御遊ありけるに、「とりかひ」といふことを人々に詠ませられけるに、あそび2)あまた参り集まれる、その中に歌よく歌ひて声よき者のありけるを問はるるに、「丹波守玉渕3)が女(むすめ)、白女」となん申しけり。
御門、御船召し寄せて、「玉渕は詩歌に巧みなりし者なり。その女ならば、この歌詠むべし。さらばまことと思し召すべき」よし、仰せらるるに、ほど経ず詠みける、
ふかみどりかひある春にあふときは霞ならねど立ち昇りけり
御門、讃めあはれみ給ひて、御袿(おんうちぎ)一重(ひとかさね)を賜はせけり。そのほか上達 部・殿上人、おのおの衣(きぬ)脱ぎてかづけられければ、二間ばかりに積み余りけるとなむ。
翻刻
にや亭子院鳥養院にて御遊ありけるにとりかひといふこと を人々によませられけるにあそひあまたまいりあつまれる 其中に哥よくうたひてこゑよきもののありけるをとはるるに 丹波守玉渕かむすめ白女となん申けり御門御船めしよせ て玉渕は詩哥にたくみなりしものなり其女ならは此哥/s143r
よむへしさらはまこととおほしめすへき由仰らるるに程へすよみける ふかみとりかいある春にあふときは霞ならねと立のほりけり 御門ほめあはれみ給て御うちき一重をたまはせけり其外上達 部殿上人をのをのきぬぬきてかつけられけれは二間はかりにつ みあまりけるとなむ/s143l
text/chomonju/s_chomonju199.txt · 最終更新: 2020/03/14 22:20 by Satoshi Nakagawa