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text:chomonju:s_chomonju169

古今著聞集 和歌第六

169 帥民部卿経信卿またこの人に劣らざりけり・・・

校訂本文

帥民部卿経信卿1)、またこの人2)に劣らざりけり。

白河院3)、西河4)に行幸の時、詩歌管絃の三つの舟を浮べて、その道の人々を分かちて乗せられけるに、経信卿遅参5)の間、ことのほかに御気色悪しかりけるに、とばかり待たれて参りたりけるが、三事兼ねたる人にて、水際(みぎは)にひざまづきて、「やや、いづれの船にても寄せ候へ」と言はれたりける、時にとりていみじかりけり。かく言はん料(れう)に遅参せられけるとぞ。

さて、管絃の船に乗りて、詩歌を献ぜられたりけり。三船に乗るとはこれなり。

翻刻

帥民部卿経信卿又この人にをとらさりけり白河院西河
に行幸のとき詩哥管絃の三の舟をうかへて其道の
人々をわかちてのせられけるに経信卿参のあひたことの
ほかに御気色あしかりけるにとはかりまたれてまいりたりけるか
三事かねたる人にてみきはにひさまつきてややいつれ
の舟にてもよせ候へといはれたりける時にとりていみしかり
けりかくいはんれうに遅参せられけるとそさて管絃の船に
乗て詩哥を献せられたりけり三船にのるとはこれなり/s126r

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/126

1)
源経信
2)
藤原公任。168参照。
3)
白河天皇
4)
大井川
5)
「遅参」は底本「遅」なし。諸本により補う。
text/chomonju/s_chomonju169.txt · 最終更新: 2020/03/01 18:48 by Satoshi Nakagawa