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text:chomonju:s_chomonju153

古今著聞集 和歌第六

153 ある所に仏事しけるに唐人二人来たりて聴聞しけるが・・・

校訂本文

ある所に仏事しけるに、唐人二人来たりて聴聞しけるが、磬(けい)に八葉の蓮を中にて、孔雀の左右に立ちたるを文(もん)に鋳付けたりけるを見て、一人の唐人、「捨身惜花思」と言ひけるを、今一人聞きて、うちうなづきて、「打不立有鳥」と言ひけり。聞く人、その心を知らず。

ある人、のどかに案じつらね1)ければ、連歌にて侍りけり。

 身を捨てて花を惜しとや思ふらん打てども立たぬ鳥もありけり

かく思ひ得てけり。わりなくぞ思ひ連ねける。

翻刻

或所に仏事しけるに唐人二人きたりて聴聞しけ
るか磬に八葉の蓮を中にて孔雀の左右に立たるを
文に鋳つけたりけるをみて一人の唐人捨身惜花思と
いひけるを今一人ききてうちうなつきて打不立有鳥と
いいけりきく人その心をしらす或人のとかにあむしつ
らぬけれは連哥にて侍けり/s117l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/117

 身をすてて花を惜とや思らんうてともたたぬ鳥もありけり
かくおもひえてけりわりなくそ思つらねける/s118r

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/118

1)
「つらね」は底本「つらぬ」。諸本により訂正。
text/chomonju/s_chomonju153.txt · 最終更新: 2020/02/24 15:58 by Satoshi Nakagawa