仁平のころ、宋朝の商客劉文冲、東坡先生¹⁾指掌図二帖・五代記²⁾十帖・唐書九帖、名籍(めいせき)を添へて、宇治左府³⁾に奉りたりけり。返事は文章博士茂明朝臣⁴⁾草して、前宮内大輔定信⁵⁾ぞ清書したりける。尾張守親隆朝臣⁶⁾が奉書にぞ書きたりける。砂金二十両を賜はせけり。また、要書目録⁷⁾をもつかはしけり。

万寿三年に周良史といひける者、名籍を宇治殿⁸⁾に奉りたること⁹⁾ありけり。そのたびは書をば奉らざりけり。

仁平の比宋朝商客劉文冲東坡先生指掌図
二帖五代記十帖唐書九帖名籍をそへて宇治左
府にたてまつりたりけり返事は文章博士茂明
朝臣草して前宮内大輔定信そ清書したりける
尾張守親隆朝臣か奉書にそかきたりける砂金廿
両をたまはせけり又要書目六をもつかはしけり
万寿三年に周良史といひけるもの名籍を宇治殿に
たてまつり事ありけりそのたひは書をはたてまつらさりけり／s97r

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