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text:chomonju:s_chomonju099

古今著聞集 公事第四

99 後白河院御熊野詣藤代の宿につかせおはしましたりけるに・・・

校訂本文

後白河院1)、御熊野詣(みくまのまうで)に、藤代(ふぢしろ)の宿につかせおはしましたりけるに、国司、松煙をつみて、御前に置きたりけり。花山院左府2)、中山太政入道殿3)、その時右大将にて、御前に候はせ給ひたりけるに4)、「この墨、いかほどのものぞ。試みよ」と勅定ありければ、大臣(おとど)、右大将に勧め申されければ、硯を引き寄せて、墨を取りて磨らせ給ひけり。その様、除目の執筆の定(ぢやう)なりけり。左府見とがめて、しきりに感歎の気色ありけり。

翻刻

後白河院御熊野詣に藤代の宿につかせおはし
ましたりけるに国司松煙をつみて御前にをきたり
けり花山院左府中山太政入道殿その時右大将/s84l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/84

にて御前に候はせ給たりけるこの墨いか程の物そ
心みよと勅定ありけれはおとと右大将にすすめ申され
けれは硯をひきよせてすみをとりてすらせ給けりその
様除目の執筆の定なりけり左府見とかめてしき
りに感歎のけしきありけり/s85r

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/85

1)
後白河上皇
2)
藤原兼雅
3)
藤原頼実
4)
底本「に」なし。諸本により補う。
text/chomonju/s_chomonju099.txt · 最終更新: 2020/02/01 19:43 by Satoshi Nakagawa