text:chomonju:s_chomonju082
古今著聞集 政道忠臣第三
82 匡房中納言は太宰権帥になりて任に赴かれたりけるに・・・
校訂本文
匡房中納言1)は、太宰権帥になりて任に赴かれたりけるに、道理にて取りたる物をば舟一艘に積み、非道にて取りたる物をばまた一艘に積みて上(のぼ)られけるに、道理の舟は入海してけり。非道の舟、平らかに着きてければ、江帥(がうのそつ)言はれけるは、「世は早く末になりにたり。人いたく正直なるまじきなり」とぞ侍りける。それを悟らむがために、かく積みて上らせられけるにや。
昔中ごろだにかやうに侍りけり。末代よくよく用心あるべきことなり。
翻刻
匡房中納言は太宰権帥になりて任におもむかれたり けるに道理にてとりたる物をは舟一艘につみ非道 にてとりたる物をは又一艘につみてのほられけるに道理の 舟は入海してけり非道の舟たひらかにつきてけれは 江帥いはれけるは世ははやくすゑになりにたり人いたく 正直なるましき也とそ侍けるそれをさとらむか為に かくつみてのほせられけるにや昔なか比たにかやうに 侍けり末代よくよく用心あるへきことなり/s76l
1)
大江匡房
text/chomonju/s_chomonju082.txt · 最終更新: 2020/01/28 16:17 by Satoshi Nakagawa