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text:chomonju:s_chomonju076

古今著聞集 政道忠臣第三

76 村上の御時南殿に出御ありけるに諸司の下部の年たけたるが・・・

校訂本文

村上1)の御時、南殿に出御ありけるに、諸司の下部(しもべ)の年たけたるが、南階の辺に候ひけるを召して、「当時の政道をば、世にはいかが申す」と御尋ねありければ、「めでたく候ふとこそ申し候へ。ただし、主殿寮(とのもれう)に松明(たいまつ)罷り入り候ふ。率分堂(りつぶんだう)に草候ふ」と奏したりければ、御門、おほきに恥ぢ思し召してけり。させる公事の日にはあらざりけるにや。

「松明の入る」と申すは、公事の夜に入るよしにて侍り。「率分堂に草のしげれる」とは、諸国の貢ぎ物の参らぬよしなるべし。いみじく申したりける者なり。

翻刻

村上御時南殿出御ありけるに諸司の下部の年
たけたるか南階の辺に候けるをめして当時の政道
をは世にはいかか申すと御尋ありけれはめてたく候とこそ
申候へ但主殿寮に松明罷入候率分堂に草
候と奏たりけれは御門おほきにはちおほしめして
けりさせる公事の日にはあらさりけるにや松明の/s74r
いると申は公事の夜に入よしにて侍り率分堂に
草のしけれるとは諸国のみつきもののまいらぬよし
なるへしいみしく申たりける者なり/s74l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/74

1)
村上天皇
text/chomonju/s_chomonju076.txt · 最終更新: 2020/01/27 21:16 by Satoshi Nakagawa