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text:chomonju:s_chomonju050
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text:chomonju:s_chomonju050 [2020/01/16 22:37] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +[[index.html|古今著聞集]] 釈教第二
 +====== 50 性信二品親王は三条院末の御子御母は小一条大将済時卿女なり・・・ ======
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 +===== 校訂本文 =====
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 +性信二品親王((三条天皇第四皇子師明親王))は三条院末の御子、御母は小一条大将済時卿((藤原済時))女((藤原娍子))なり。昔、母后の御夢に胡僧来たりて、「君の胎に託せんと思ふ」と申しけり。その後懐妊し給ひけり。誕生の日、神光室を照らす。御法は名性信なり。大御室(おほおむろ)とぞ申し侍りける。
 +
 +院、御瘧病(おこりやみ)の時、諸寺の高僧等、その験を失ひけるに、この親王、朝より孔雀経一部を持ちて参らせ給ひて、御祈念ありけるほどに、すでに御気反(へん)じて、おこらせ給はんとしけるほどに、御室の御膝を枕にして、御休みありけるが、御気色火急げに見えさせ給ひければ、御室、信心をいたして孔雀経を読ませ給ふ。その御涙、経より伝はりて、院の御顔に冷たくかかりけるに、御信心のほど思し召しられけるほどに、すみやか時に御色なほらせ給ひて、その日はおこらせ給はざりけり。勧賞(けんじやう)には仏母院といふ堂を建てて、阿闍梨など置かれけり。
 +
 +また同じ御時、参内せさせ給ひたりけるに、勅定(ちょくぢやう)に、「世間には以外(もつてのほか)に有験の人と申すなるに、わが見る前にて、その験あらはさるべし」と仰せられければ、勅定背(そむ)きがたくて、しばらく念誦観念せさせ給ひて、御念珠を投げ出だされたりければ、弟子を足にして、二三帀(さふ)ばかり走り歩みたりければ((「たりければ」は底本「たれけれは」。諸本により訂正。))、急ぎ御障子を立てて入御ありけるとなん。
 +
 +すべて、院・宮・関白をはじめ奉りて、霊験を蒙(かうぶ)る人その数多し。さのみはこと長けれは記さず。
 +
 +応徳二年九月二十七日、つひに往生を遂げさせ給ひにけり。堀川左大臣((源俊房))、右大臣の時、紫雲をばまさしく見られけるとぞ。延暦寺僧慶覚は、空中に音楽を聞きけり。荼毘の時、御平生の間とかせ給はざりける御帯、棺の中にて焼けざりけり。不思議のこととぞ世の人申しける。
 +
 +===== 翻刻 =====
 +
 +  性信二品親王は三条院末の御子御母は小一条大将済時卿
 +  女なり昔母后の御夢に胡僧来て君の胎に託せんと思
 +  ふと申けり其後懐妊し給けり誕生の日神光室をてら
 +  す御法名性信也大御室とそ申侍ける院御瘧病の時諸寺
 +  の高僧等其験を失けるに此親王朝より孔雀経一部
 +  を持てまいらせ給て御祈念ありける程に已に御気反して
 +  おこらせ給はんしとける程に御室の御膝を枕にして御やす
 +  みありけるか御気色火急けに見えさせ給ひけれは御室信
 +  心をいたして孔雀経をよませたまふその御涙経よりつた
 +  はりて院の御顔につめたくかかりけるに御信心の程
 +  思食しられける程に速時に御色なをらせ給て其日は発せ/s45l
 +
 +http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/45
 +
 +  給はさりけり勧賞には仏母院といふ堂をたてて阿
 +  闍梨なとをかれけり又同御時参内せさせ給たりけるに
 +  勅定に世間には以外に有験の人と申なるに我かみる
 +  まへにて其験あらはさるへしと仰られけれは勅定背
 +  かたくてしはらく念誦観念せさせ給て御念珠をなけ
 +  いたされたりけれは弟子を足にして二三帀はかり走あゆ
 +  みたれけれはいそき御障子をたてて入御ありけるとなんす
 +  へて院宮関白をはしめ奉りて霊験を蒙る人その数
 +  多しさのみは事なかけれはしるさす応徳二年九月廿
 +  七日終に往生を遂させ給にけり堀河左大臣右大臣の時
 +  紫雲をはまさしくみられけるとそ延暦寺僧慶覚は/s46r
 +
 +  空中に音楽をききけり荼毘のとき御平生の間とか
 +  せたまはさりける御帯棺の中にて焼さりけり不思
 +  議の事とそ世の人申ける/s46l
 +
 +http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/46
  
text/chomonju/s_chomonju050.txt · 最終更新: 2020/01/16 22:37 by Satoshi Nakagawa