ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:chomonju:s_chomonju005

古今著聞集 神祇第一

5 慈覚大師如法経書き給ひけるとき白髪の老翁杖にたづさはりて・・・

校訂本文

慈覚大師1)、如法経書き給ひけるとき、白髪の老翁、杖にたづさはりて、山によぢ登りけるが、「あな苦し。内裏の守護といひ、この如法経の守護といひ、年は高くなりて、苦しう候ふぞ」と宣ひけり。「誰が御渡り候ふぞ」と尋ね申されければ、「住吉の神なり」とぞ名乗り給ひける。皇威も法威もめでたかりけるかな。

住吉は四所おはします。一の御前は、高貴徳王大菩薩なり。竜に乗る2)

御託宣に云はく、「我は是、兜率天内高貴徳王菩薩なり。国家を鎮護の為に、跡を当朝墨江辺に垂る。 松林の下(もと)に久しく風霜を送る。時に受苦有て、自ら北方に当りて、一の勝地有り。願はくは公家に奏達して、一の伽藍を建立して、法輪を転ぜよ。云々」

これによりて、神宮寺をは建立せられけるなり。また津守国基(つもりのくにもと)申し侍りけるは、「南社は衣通姫(そほほりひめ)なり。玉津島明神と申すなり。和歌浦に玉津島の明神と申す、この衣通姫なり。昔、かの浦の風景を饒(ゆた)かに思しめししゆゑに、跡を垂れおはしますなり」とぞ。

翻刻

慈覚大師女法経かきたまひける時白髪の老翁杖に
たつさはりて山によちのほりけるかあなくるし内裏の
守護といひ此如法経の守護といひ年はたかく成て
くるしう候そとの給けりたか御渡候そとたつね
申されけれは住吉神也とそ名乗給ける皇威も法
威もめてたかりけるかな住吉は四所おはします一御前/s11l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/11

は高貴徳王大菩薩也乗竜御託宣云我是兜率天内
高貴徳王菩薩也為鎮護国家垂跡於当朝墨江辺
松林下久送風霜時有受苦自当北方有一勝地願奏
達公家建立一伽藍転法輪云々これによりて神
宮寺をは建立せられけるなり又津守(ツモリノ)国基申
侍けるは南社は衣通(ソトホリ)姫也玉津島明神と申也和謌
浦に玉津島の明神と申此衣通姫也昔彼浦の
風景を饒(ゆたかに)思食し故に跡をたれおはしますなりとそ/s12r

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/12

1)
円仁
2)
底本「竜に乗る(乗竜)」は割注のように小書


text/chomonju/s_chomonju005.txt · 最終更新: 2020/01/06 21:19 by Satoshi Nakagawa