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text:chomonju:s_chomonju000_jo [2021/02/10 21:32] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:chomonju:s_chomonju000_jo [2021/02/16 22:48] (現在) – [書き下し文] Satoshi Nakagawa | ||
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===== 書き下し文 ===== | ===== 書き下し文 ===== | ||
- | 夫れ著聞集といふは、宇県の亜相の巧語の遺類、江家の都督が清談之餘波なり。余、芳橘の種胤を禀けて、璅材(さざい)の樗質(ちよしつ)を顧みるに、琵琶は賢師の伝ふる所なり。たまたま六律六呂の調べを弁(わきま)ふ。図画(とが)は愚性の好む所なり。自(みづか)ら一日一時の心を養ふ。於戯(ああ)、春鶯の花の下に囀(さへづ)り、秋雁の月の前に叫ぶ、暗(そら)に幽曲の和し易きことを感ず。風流の地勢に随ひ、品物(ひんぶつ)の天為に叶ふ、悉く彩筆の写すべきを憶(おも)ふ。これによて或は伶客に伴ひて、潜(ひそか)に治世の雅音(がいん)を楽しみ、或は画工を誂へて、略(ほぼ)振古(しんこ)の勝概(しようがい)を呈す。蓋し居ること暇景多かつしより以降、閑(しづ)かに徂年に度(わた)るの故に、この両端を勘(かんが)ふるに拠(よ)つて、その庶事を捜(さぐ)り索(もと)む。註緝(ちゆうしふ)して三十篇と為す。編次二十巻。名づけて古今著聞集と曰ふ。 | + | 夫れ著聞集といふは、宇県の亜相の巧語の遺類、江家の都督が清談の余波なり。余、芳橘の種胤を禀けて、璅材(さざい)の樗質(ちよしつ)を顧みるに、琵琶は賢師の伝ふる所なり。たまたま六律六呂の調べを弁(わきま)ふ。図画(とが)は愚性の好む所なり。自(みづか)ら一日一時の心を養ふ。於戯(ああ)、春鶯の花の下に囀(さへづ)り、秋雁の月の前に叫ぶ、暗(そら)に幽曲の和し易きことを感ず。風流の地勢に随ひ、品物(ひんぶつ)の天為に叶ふ、悉く彩筆の写すべきを憶(おも)ふ。これによて或は伶客に伴ひて、潜(ひそか)に治世の雅音(がいん)を楽しみ、或は画工を誂へて、略(ほぼ)振古(しんこ)の勝概(しようがい)を呈す。蓋し居ること暇景多かつしより以降、閑(しづ)かに徂年に度(わた)るの故に、この両端を勘(かんが)ふるに拠(よ)つて、その庶事を捜(さぐ)り索(もと)む。註緝(ちゆうしふ)して三十篇と為す。編次二十巻。名づけて古今著聞集と曰ふ。 |
- | 頗(すこぶ)る狂簡(きやうかん)たりといへども、聊(いささ)か又実録を兼ぬ。不敢窺漢家経史之中。有世風人俗之製矣。只今、日域古今の際を知り、街談巷説の諺(ことわざ)有り。なほ浅見寡聞の疎越(そえつ)を愧ず。偏に博識宏達(はくしよくくわうだつ)の盧胡(ろこ)を招く。ゆめゆめ蝸廬を出さざれ。謬つて鴻宝に比す。 | + | 頗(すこぶ)る狂簡(きやうかん)たりといへども、聊(いささ)か又実録を兼ぬ。敢へて漢家経史の中を窺はず、世風人俗の製有り。只今、日域古今の際を知り、街談巷説の諺(ことわざ)有り。なほ浅見寡聞の疎越(そえつ)を愧ず。偏に博識宏達(はくしよくくわうだつ)の盧胡(ろこ)を招く。ゆめゆめ蝸廬を出さざれ。謬つて鴻宝に比す。 |
時に建長六年応鐘中旬。散木の士橘南袁。憖(ほしい)ままに小童に課(おほ)せて猥(みだり)がはしく大較(たいかう)を叙(の)ぶるのみ。 | 時に建長六年応鐘中旬。散木の士橘南袁。憖(ほしい)ままに小童に課(おほ)せて猥(みだり)がはしく大較(たいかう)を叙(の)ぶるのみ。 |
text/chomonju/s_chomonju000_jo.1612960364.txt.gz · 最終更新: 2021/02/10 21:32 by Satoshi Nakagawa