世継物語
今は昔、御堂出家せさせ給ひて、衣替への物取りに、上東門院へ参らせ給ふとて、
からころも花の袂にたち1)かへよ我こそ春の色はたちつれ
御返し
からころもたちかはりぬる世の中はいかでか花の色もきるべき
これを聞て、和泉式部が参らせたる。
脱ぎかへん事ぞ悲しき春の色を君がたちける衣と思へば
今はむかし御堂出家せさせ給て衣かへの物とりに 上東門院へまいらせ給ふとて から衣花の袂に立かへよ我こそ春の色はたちつれ/22オ
御返し から衣立かはりぬる世の中はいかてか花の色もきるへき これを聞て和泉式部かまいらせたる ぬきかへん事そ悲しき春の色を君か立ける衣と思へは/22ウ