世継物語
今は昔、御堂造らせ給ひけるおりに、池掘る翁のあやしき顔の映るを見て、
くもりなく鏡と見ゆる池の面に映れる影の恥かしきかな
また、頭(かしら)白き法師、
かくばかりさやけく照れる夏の日に我がいただきの雪ぞ消えせぬ
など言ふ者の思ゆるにやと。あはれなり。
いまは昔御たうつくらせ給けるおりにいけほるおきなの あやしきかほのうつるをみて くもりなく鏡とみゆる池の面にうつれる影の恥かしき哉 又かしらしろき法し かく斗さやけくてれる夏の日に我いただきの雪ぞ消せぬ なといふ物のおほゆるにやとあはれ也/19オ