宇治拾遺物語
東人哥事
東人、歌の事
今は昔、東人(あづまうど)1)の、歌いみじう好み詠みけるが、蛍を見て、
あなてりや虫のしや尻に火のつきて小人玉(こひとだま)とも見えわたるかな
「東人のやうに詠まん」とて、まことは貫之2)が詠みたりけるとぞ。
いまはむかしあつまことの歌いみしう好みよみけるか蛍をみて あなてりや虫のしや尻に火のつきてこ人玉ともみえ渡るかな あつま人のやうによまんとて実は貫之かよみたりけるとそ/下59オy371