大和物語
また在中将1)、内裏(うち)にさぶらひけるに、御息所の御方より、忘れ草をなん、「これは何とかいふ」とて、賜へりければ、中将、
忘れ草生(お)ふる野辺とは見るらめどこは忍ぶなりのちも頼まん
となんありける。
同じ草を、忍ぶ草・忘れ草といへば、それによりなん詠みたりけり。
おかしとおほしけり又 さい中将うちにさふらひけるにみやす ところの御かたよりわすれくさをな んこれはなにとかいふとて給えりけ れは中将 わすれくさおふるのへとはみるら めとこはしのふなりのちもたのまん となんありけるをなしくさをしのふ/d63l
くさわすれくさといへはそれにより なんよみたりけり/d64r