大和物語
こやくしといひける人、ある人をよばひて、おこせたりける。
かくれ沼(ぬ)の底の下草水(み)隠れて知られぬ恋は苦しかりけり
返し、女、
水隠れに隠るばかりの下草は長からじとも思ほゆるかな
このこやくしといひける人は、丈(たけ)なんいと短かかりける。
こやくしといひける人あるひとを/d23l
よはひてをこせたりける かくれぬのそこのしたくさみか くれてしられぬこひはくるしかりけり かへし女 みかくれにかくるはかりのしたく さはなかからしともおもほゆるかな このこやくしといひけるひとはたけ なんいとみしかかりける/d24r