目次

大和物語

第138段 こやくしといひける人ある人をよばひておこせたりける・・・

校訂本文

こやくしといひける人、ある人をよばひて、おこせたりける。

  かくれ沼(ぬ)の底の下草水(み)隠れて知られぬ恋は苦しかりけり

返し、女、

  水隠れに隠るばかりの下草は長からじとも思ほゆるかな

このこやくしといひける人は、丈(たけ)なんいと短かかりける。

翻刻

こやくしといひける人あるひとを/d23l
よはひてをこせたりける
  かくれぬのそこのしたくさみか
  くれてしられぬこひはくるしかりけり
かへし女
  みかくれにかくるはかりのしたく
  さはなかからしともおもほゆるかな
このこやくしといひけるひとはたけ
なんいとみしかかりける/d24r