大和物語
この檜垣の御1)、歌をなん詠むと言ひて、数寄者(すきもの)ども集まりて、「詠みがたかるべき末を付けさせん」とて、かく言ひけり
わたつみの中にぞ立てるさを鹿は2)
とて、末を付けさするに、
秋の山辺やそこに見ゆらん
とぞ、付けたりける。
このひかきのこうたをなんよむとい ひてすきものともあつまりてよみ かたかるへきすえをつけさせんとて/d19l
かくいひけり わたつみのなかにそたてるさをし□□ とてすえをつけさするに あきのやまへやそこにみゆらん とそつけたりける/d20r