大和物語
土佐の守にありける酒井の人真(ひとざね)1)といひける人、病(やまひ)して弱くなりて、「鳥羽なりける家に行く」とて、詠みける
行く人はそのかみ来むと言ふものを心細しな今日の別れは
とさのかみにありけるさかいの人さねと いひけるひとやまゐしてよはくなり てとはなりけるいへにゆくとて よみける ゆくひとはそのかみこむといふ ものを心ほそしなけふのわかれは/d52r