大和物語
大井に季縄(すゑなは)1)の少将住み給ひけるころ、亭子の御門ののたまひける。「花おもしろくなりなば、必ず御覧ぜん」とありけるを、思し忘れて、おはしまさざりけり。
されば、少将、
散りぬればくやしきものを大井川岸の山吹今日さかりなり
とありければ、いたう2)あはれがり給ひて、急ぎおはしまして御覧じける。
おほゐにすゑなはの少将すみ給け るころていしの御かとののたまひけ るはなをもしろくなりなはかな らすこらむせんとありけるをおほし わすれておはしまささりけりされ は少将 ちりぬれはくやしきものをおほ 井かはきしのやまふきけふさかりなり とありけれはたうあはれかり給ていそきおはしまして御/d50r
らんしける同季縄の少将やまひにいた/d50l