大和物語
故権中納言1)、左の大臣(おとど)2)の君3)をよばひ給ひける年の、師走のつごもりに、
もの思ふと月日のゆくも知らぬまに今年は今日に果てぬとか聞く
となんありける。
また、かくなん。
いかにしてかく思ふてふことをだに人づてならで君に語らん
かく言ひ言ひて、つひに逢ひにけるあしたに、
今日そへに暮れざらめやと思へども耐えぬは人の心なりけり
故権中納言左のおととのきみをよはひ たまひけるとしのしはすのつこもりに ものおもふと月日のゆくもしらぬ まにことしはけふにはてぬとかきく となんありける又かくなん いかにしてかくおもふてふことを/d45l
たにひとつてならてきみにかたらん かくいひいひてつゐにあひにけるあし たに けふそへにくれさらめやとおもへとも たえぬはひとのこころなりけり/d46r