大和物語
同じ男1)、紀の国2)に下るに、「寒し」とて、衣(きぬ)を取りにおこせたりければ、女、
紀の国の牟婁(むろ)の郡(こほり)に行く人は風の寒さも思ひ知られじ
返し、男、
紀の国の牟婁の郡に行きながら君とふすまのなきぞわびしき
おなしおとこきのくににくたる に寒しとてきぬをとりにおこせたりけれ はをんな きのくにのむろのこほりにゆく/d42l
ひとはかせのさむさもおもひしられし かへしおとこ きのくにのむろのこほりにゆき なからきみとふすまのなきそわひしき/d43r