大和物語
但馬の国に通ひける、兵庫の頭(かみ)なりける男の、かの国なりける女を置きて、京へ上りければ、雪の降りけるに、言ひおこせたりける。
山里にわれをとどめて別れ路(ぢ)のゆきのまにまに深くなるらん
と言ひたりければ、返し、
山里に通ふ心も絶えぬべし行くも留(と)まるも心細さに
となん、返したりける。
たちまのくににかよひける ひやうこのかみなりけるおとこのかの くになりける女ををきて京へ のほりけれはゆきのふりけるに/d42r
いひをこせたりける やまさとにわれをととめてわかれ ちのゆきのまにまにふかくなるらん といひたりけれはかへし やまさとにかよふこころもたえぬへし ゆくもとまるもこころほそさに となんかへしたりける/d42l