大和物語
正月(むつき)のついたちごろ、大納言殿1)に、兼盛2)参りたりけるに、ものなどのたまはせて、すずろに、「歌詠め」とのたまひければ、
今日よりは荻の焼け原3)かき分けて若菜つみにと誰を誘はん
と詠みたりければ、ことにめで給ひて、御返し、
片岡にわらび萌えずはたづねつつ心やりにや若菜つままし
となん詠み給ひける。
むつきのついたちころ大納言とのに かねもりまいりたりけるに物なと のたまはせてすすろにうたよめと/d41l
のたまひけれは けふよりはをきのやへはらかき わけてわかなつみにとたれをさそはん とよみたりけれはことにめて給て 御返し かたをかにわらひもえすはたつね つつこころやりにやわかなつままし となんよみ給ける/d42r