大和物語
のうさんの君といひける人、浄蔵といとになう思ひかはす仲なりけり。かぎりなう契りて、思ふことをも言ひかはしけり。
のうさんの君、
思ふてふ心はことにありけるを昔の人に何を言ひけん
と言ひおこせたりければ、浄蔵大徳(だいとく)の返事、
行く末の宿世(すくせ)を知らぬ心には君にかぎりの身とぞ言ひける
のうさんのきみといひける人浄蔵と いとになうおもひかはすなかなりけり かきりなうちきりておもふこと をもいひかはしけりのうさんのきみ おもふてふこころはことにありける をむかしのひとになにをいひけん といひをこせたりけれは浄蔵たいと くの返事ゆくすゑのすくせをしら ぬこころにはきみにかきりの身とそ いひける/d31r