大和物語
右京の大夫(かみ)宗于1)の君、にてう2)に当りける人、博奕(ばくやう)をして、親にもはらからにも憎まれければ、「足の向かん方(かた)へ行かむ」とて、人の国へなん行(い)きける。
さて、思ひける友達のもとへ、詠みておこせたりける。
しをりして行く旅なれどかりそめの命知らねば帰りしもせじ
右京のかみむねゆきのきみにてうに あたりける人はくやうをしてをやに もはらからにもにくまれけれはあしの むかんかたへゆかむとて人のくにへなん いきけるさておもひけるともたちの もとへよみておこせたりける しをりしてゆくたひなれとかりそ めのいのちしらねはかえりしもせし/d26l