大和物語
堤の中納言の君1)、十三の皇子2)の母御息所3)を、内裏(うち)に奉り給ひけるはじめに、「御門はいかが思し召すらん」など、いとかしこく思ひ歎き給ひける。
さて、御門に詠みて奉りける。
人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな
先帝4)、いとあはれに思し召したりけり。御返事ありけれど、人は知らず。
つつみの中納言の君十三の御このはは 宮す所をうちにたてまつりたま ひけるはしめにみかとはいかかおほし めすらんなといとかしこくおもひ/d24r
なけきたまひけるさてみかとによ みてたてまつりける ひとのをやのこころはやみにあらねと もこを思ふみちにまとひぬるかな 先帝いとあはれにおほしめしたりけり 御返事ありけれとひとはしらす/d24l