大和物語
同じ人1)の御もとに、久しくおはしまさざりければ、秋のことなりけり。
世に経れど恋もせぬ身の夕さればすずろにものの悲しきやなぞ
とありければ、御返し、
夕暮れにもの思ふときは神無月われも時雨(しぐれ)におとらさりけり
となむありける。
心に入らで、悪しくなん詠み給ひける。
とありけるをなし人をなし御子の御/d13l
もとにひさしくおはしまささりけれは あきのことなりけり よにふれとこひもせぬ身のゆふさ れはすすろにもののかなしきやなそ とありけれは御かへし ゆふくれにものおもふときは神な 月われもしくれにおとらさりけり となむありけるこころにいらてあしくなん よみたまひける/n14r