大和物語
前坊の君1)、失せ給ひにければ、大輔、かぎりなく悲しくのみ思ゆるに、后(きさい)の宮2)、后(きさき)に立ち給ふ日になりにければ、「ゆゆし」とて、隠しけり。これは3)、読みて出だしける。
わびぬれば今はたものを思へども心に似ぬは涙なりけり
前坊のきみうせたまひにけれは大輔かき りなくかなしくのみおほゆるにきさいの みやきさきにたちたまふひになりに けれはゆゆしとてかくしけり(さりけれイ)これはよみ ていたしける わひぬれはいまはたものををもへとも こころににぬはなみたなりけり/d8r