徒然草
惟継中納言1)は、風月の才に富める人なり。
一生精進にて、読経うちして、寺法師2)の円伊僧正と同宿して侍りけるに、文 保に三井寺3)焼かれし時、坊主にあひて、「御坊(ごばう)をば寺法師とこそ申しつれど、寺はなければ、今よりは法師とこそ申さめ」と言はれけり。
いみじき秀句なりけり。
惟継中納言は。風月の才にとめる人也。 一生精進にて読経うちして。寺法師 の円伊僧正と同宿して侍けるに。文 保に三井寺やかれし時。坊主にあひ て御坊をばてら法師とこそ申つれど。寺 はなければ今よりは。ほうしとこそ申 さめといはれけりいみじき秀句也けり/w1-64r
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