徒然草
わが身のやんごとなからんにも、まして、数ならざらんにも、子といふもの、無くてありなん。
前中書王1)・九条太政大臣2)・花園左大臣3)、みな族(ぞう)絶えんことを願ひ給へり。染殿大臣4)も、「子孫おはさぬぞ、良く侍る。末のおくれ給へるは、悪(わろ)きことなり」とぞ、世継の翁の物語5)には言へる。
聖徳太子の、御墓をかねて築(つ)かせ給ひける時も、「ここを切れ、かしこを断て。子孫あらせじと思ふなり」と侍りけるとかや。
わか身のやんごとなからんにも。まし て数ならざらんにも。子といふ物なく て有なん。前中書王。九条太政大臣。花 園左大臣みなぞう絶ん事をねがひ 給へり。染殿大臣も子孫おはさぬぞよく 侍る。末のをくれ給へるはわろき事也と ぞ世継の翁の物語にはいへる。聖徳 太子の御墓をかねてつかせ給ける時も。/w1-6r
ここをきれかしこをたて。子孫あら せしと思ふ也と侍りけるとかや/w1-6l
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