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徒然草

第3段 よろづにいみじくとも色好まざらん男はいとさうざうしく・・・

校訂本文

よろづにいみじくとも、色好まざらん男は、いとさうざうしく、玉の巵(さかづき)の当(そこ)なき心地ぞすべき。

露霜にしほたれて、所定めずまどひ歩(あり)き、親のいさめ、世のそしりをつつむに、心のいとまなく、あふさきるさに思ひ乱れ、さるは独寝(ひとりね)がちに、まどろむ夜なきこそをかしけれ。

さりとて、ひたすらたはれたる方(かた)にはあらで、女にたやすからず思はれんこそ、あらまほしかるべきわざなれ。

翻刻

万にいみじくとも。色このまざらん男
は。いとさうざうしく。玉の巵の当なき
ここちぞすべき。露霜にしほたれて所
さだめずまどひありき。親のいさめ世の
そしりをつつむに心のいとまなく。あふ
さきるさに思ひみだれ。さるは独寝がちに
まどろむ夜なきこそおかしけれ。さり/w1-5r
とてひたすらたはれたる方にはあら
で。女にたやすからずおもはれんこそ
あらまほしかるべきわざなれ/w1-5l

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0005.jpg