徒然草
よろづにいみじくとも、色好まざらん男は、いとさうざうしく、玉の巵(さかづき)の当(そこ)なき心地ぞすべき。
露霜にしほたれて、所定めずまどひ歩(あり)き、親のいさめ、世のそしりをつつむに、心のいとまなく、あふさきるさに思ひ乱れ、さるは独寝(ひとりね)がちに、まどろむ夜なきこそをかしけれ。
さりとて、ひたすらたはれたる方(かた)にはあらで、女にたやすからず思はれんこそ、あらまほしかるべきわざなれ。
万にいみじくとも。色このまざらん男 は。いとさうざうしく。玉の巵の当なき ここちぞすべき。露霜にしほたれて所 さだめずまどひありき。親のいさめ世の そしりをつつむに心のいとまなく。あふ さきるさに思ひみだれ。さるは独寝がちに まどろむ夜なきこそおかしけれ。さり/w1-5r
とてひたすらたはれたる方にはあら で。女にたやすからずおもはれんこそ あらまほしかるべきわざなれ/w1-5l
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