醒睡笑 巻8 祝ひすました
桶結(をけゆひ)のありしが、元日の朝ふと起き起き、女房の言ひけるやうは、「元三(ぐわんざん)から大晦日まで、ようゆひごと1)をする人には、お身よりほか、また二人ともあるまいぞ」。やがて男、「そのゆひごとは、千あらうと万あらうと、みなわが2)悪いからよ」と祝うたれば、その年、そこそこの仕合(しあは)せ、くれぐれよかりき。
一 桶結のありしが元日の朝ふとおきおきねう はうのいひけるやうは元三から大晦日まてよう ゆひ事をする人にはお身より外又ふたり ともあるまいぞやかて男そのゆひ事は 千あらふと万あらふとみなわかわるいからよと いはふたれは其年そこそこの仕合くれくれよかりき/n8-66r