醒睡笑 巻8 秀句
夏の天に、数日雨なうて1)民家旱損(かんそん)を歎き、氏神の社頭に風流(ふりう)をかけ雨を乞ふに、一滴も降らず。「いつも降るが奇特(きどく)や」など沙汰しあへり。
かたくななる宿老(しゆくらう)、うちうなづき、「今度の踊りが、うらは一向気に合はなんだ。なにが太鼓をば、『てれつけてれつけ、てつてれつけ2)』と打ち、鐘をば、『てんき、てんきや3)』と叩いて、笛を、『ひよりや、ひより4)』と吹いたもの。何として降らうよ」。
一 夏の天に数日雨なりて民家旱損を歎氏 神の社頭に風流をかけ雨を乞に一滴もふら すいつもふるか奇特やなと沙汰しあへりかた くななる宿老うちうなつき今度のおとり かうらは一向気にあはなんたなにが大鼓をば てれつけてれつけてつてれつけとうち鐘をはてん/n8-47r
きてんきやとたたいて笛をひよりやひよりとふい た物なにとしてふらうよ/n8-47l