醒睡笑 巻7 舞
舞は舞ひたし、習ふことはならず、なまじひに仮名書(かなぶみ)を読む者、ある席にて敦盛を舞ふに、「東国の毛虫(けむし)には、あはんと言へる平家なし」と言ふ。人みな不審し、「源氏(げんじ)とこそ舞ふべけれ。毛虫とは何のことぞや」と問はれ、かの返答に、「鑓(やり)の鞘(さや)のことにてあらうまでよ」と。
一 舞はまいたし習(なら)ふ事はならずなましひ にかな書をよむ者ある席(せき)にて敦盛(あつもり)を まふに東国(とうこく)の毛虫(けむし)にはあはんといへる平(へい) 家なしといふ人みなふしんし源氏とこそ まふべけれけむしとは何の事そやと とはれ彼返答(へんとう)に鑓(やり)のさやの事にてあらふ/n7-53l
までよと/n7-54r