醒睡笑 巻7 謡
杜若(かきつばた)1)の謡に、「『三河の国に着きにけり』とあるは、作りそこなひや」と言うて笑ふ者あり。「何と言ふがよいぞ」。「『膠(にかは)の国につけにけり』が本であるぞ」と。
雄長老
水でとくにかはのあやめ杜若にたりやにたとにためきぞする
名にしおふその八橋を来て見れば田(た)ばかりありてかきつばはなし
やせにけりこの花の名やかきつばた 長瀬2)
のまんとすれば夏の沢水 宗長
一 杜若の謡に三河の国に着(つき)にけりとある は作りそこなひやといふてわらふ者あり 何といふがよいぞにかはの国につけにけりか 本であるそと 雄長老 水でとくにかはのあやめ杜若 にたりやにたとにためきそする/n7-38r
名にしおふその八橋をきてみれは 田はかりありてかきつははなし やせにけり此花の名やかきつはた 長〓 のまんとすれはなつの 沢水 宗長 くちなはにをはれたいつちかいるらん/n7-38l