醒睡笑 巻7 謡
「仏には毛があるか、なきものか」。「いや、ない。無げ光仏1)とあり」。「いやある。けぶつ菩薩2)といへり」。互ひに論じて、堂坊主に判談を受けければ、「あるにあらず、なきにあらず」。「それは何事ぞ」。熊野(ゆや)3)の謡に、『末世一代けうすの如来4)』と作りたほどに。
一 仏には毛があるかなき物かいやない無(む)け光(くわう) 仏とありいやあるけぶつほさつといへり互(たかい)に/n7-37r
ろんじて堂坊主に判談をうけけれはあ るにあらすなきにあらずそれは何事ぞ ゆやの謡(うたひ)に末世一代(まつせいちだい)けうすのによらいと つくりたほどに/n7-37l