醒睡笑 巻6 推はちがうた
和泉の堺、市(いち)の町に、金城とて平家の下手あり。正月初参会(はつさんくわい)に出でて、「祝儀を申さんや」とうかがふ。「もつともよからん」とあり。
琵琶を調べけるに、座敷静まりたれば、「わが平家を真にかまへ、みな人よく聞かるるぞ」と思ひ、長々と語る。役人出でて、「もはや平家をおやめあれ。人は平家の始まると、そのまま立ちて一人もないに1)」と。
一 和泉の境市の町に金城とて平家の下手 有正月はつ参会に出て祝儀を申さんや と伺ふ尤よからんとあり琵琶を調けるに 座敷しつまりたれは我平家を真にかまへ皆 人よくきかるるそと思ひ長々とかたる役人出てもは や平家をおやめあれ人は平家のはしまるとそのまま/n6-48r
たちてひとりしないにと/n6-48l