醒睡笑 巻6 児の噂
児(ちご)を呼びて、伽(とぎ)の人など集め振舞ひを出だし、酒盛りの後、あまりに酔(ゑ)ひゐねぶる間に、児は帰りて見えず。
夜明けて、かの亭坊より児へ、
待つ宵の更け行くままの眠(ねぶ)たさに児の帰るさしりもせぬかな1)
児より返歌、
帰るさを知られぬことの嬉しさよしりしられてはもの憂かるべし
一 児を呼て伽の人なとあつめ振舞を出し 酒もりの後餘に酔いねふる間に児はかへ りて見えす夜明て彼亭坊より児へ 待宵の更行ままのねふたさに 児のかへるさしりもせぬかな 児より返歌 帰るさをしられぬ事の嬉しさよ しりしられては物うかるへし/n6-24l