醒睡笑 巻6 児の噂
児(ちご)に隠して、坊主餅を焼き、二つに分け、両の手に持ち食せんとするところへ、人の足音するを聞き、畳のへりを上げ、あはてて半分を隠すに、はや児見付けたり。坊主、赤面しながら、「今ほどのありさまを、おもしろく歌に詠みたらば振舞はん」と言ふに、
山寺の畳のへりは雲なれや片割れ月の入るを隠して
一 児にかくして坊主餅をやき二つにわけ両 の手にもち食せんとする処へ人の足音する を聞たたみのへりをあけあはてて半分を かくすにはや児見つけたり坊主赤面しなから/n6-17l
今程のありさまをおもしろく哥によみた らはふるまはんといふに 山寺のたたみのへりは雲なれや かたはれ月の入をかくして/n6-18r