醒睡笑 巻6 児の噂
年の暮れになれば、家内(けない)上下の定器(ぢやうぎ)どもを、侍従あつらへんと言ふを聞いて、小児(こちご)、傍らに侍従を招き言はれけるやう、「あこがをば、いかにも御器(ごき)を木薄(きうす)に底をくりて広うあつらへて」と頼まれけるに、「いや、それは飯(めし)を漏り切りにする時よかるべし。この山のは、いづれもいづれも物相(もつさう)にて候へば、器物(うつはもの)の大小にはよらず候ふ」と、つぶさに語りければ、「いや、ただあが言ふごとくあつらへ給へ。自然(じねん)、粥と入れ仏事どきがあるはよの」と。
この児を代官にほしや1)。
一 年の暮になれは家内上下の定器ともを侍 従あつらへんといふをきいて小児かたはらに侍従 をまねきいはれけるやうあこがをはいかにも御 器を木うすにそこをくりてひろふあつらへて とたのまれけるにいやそれはめしをもりきりに する時よかるへし此山のはいつれもいつれも物相にて 候へはうつは物の大小にはよらす候とつふさにかたり けれはいやたたあかいふことくあつらへたまへ自/n6-4l
然粥といれふつじ時があるはよのと 此児を代官にほしや/n6-5r