醒睡笑 巻5 人はそだち
関東より会下僧(ゑげそう)の上り、京に住まれしが、ある町人と会合す。振舞ひ過ぎて碁始まれり。僧の、俗に向かひ、「いざいざ、寄つてごろじらう」と申さるる。俗、少しも合点ゆかぬふりなれば、「『見らう』といふことだ」。それもなほ心得ぬ体なれば、「汝愚かなるかな。目前の境界(きやうがい)にてあるは」と。
一 関東より会下(ゑけ)僧の上り京にすまれしか ある町人と会合(くわいかう)す振舞過て碁始ま れり僧の俗にむかひいざいざよつてごろし/n5-71r
らうと申さるる俗少も合点ゆかぬふりなれは 見らうといふ事だそれも猶心得ぬていな れば汝愚(おろか)なるかな目前の境界にてある はと/n5-71l