醒睡笑 巻5 上戸
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きとしたる人のもとへ参るたび、酒を給はるに、いかにもかろく七分ばかりつぐ酌取りあり。理のすまぬことに思ひたくみ、ある時、朽ちたる木を包み、上に「伽羅二両」と書きて、かの給仕に持参しける。
開けて見、大きに腹立し、「憎い1)奴かな。あいつに今度からせうやうがある」とたくみ、盃にこぼるるほどづつ盛りけり。
憎まれて得をしたるたくみ、あたらしし2)。
やつかなあいつに今度からせうやうがあるとた くみ盃にこほるるほどづつもりけり にくまれてとくをしたるたくみあたらしし/n5-44r