醒睡笑 巻5 婲心
三条三光院殿1)十六歳の御時、禁中にて懐旧といふ題出でたりつるに、「何とも詠みにくし」とあれば、一座みなおもしろき顔に見なし、誰も「題を取り替へ詠まむ」と言ふ人なかりしに、
ほど近きわれ昔さへ恋しきに老いはいかなる涙なるらむ
一 三条三光院殿十六歳の御時 禁中にて 懐旧(くわいきう)といふ題出たりつるに何ともよみに/n5-21l
くしとあれは一座みなおもしろき顔に見な し誰も題をとりかへよまむといふ人なか りしに 程ちかき我昔さへ恋しきに 老はいかなる涙なるらむ/n5-22r