醒睡笑 巻3 不文字
いろはをも読まぬ者ありて、「常に人の酒飯(しゆはん)と言ふは何事ぞや」。「『酒』は『さけ』と読む、『飯』は『めし』と読むぞ」。
「かたじけなし」と覚え、ある振舞ひの座にて、「今日のもてなしは酒飯(しゆはん)ともに出来参らせた」とほむる。かれが育ちをよく知りたる者あり。「酒飯とは何ぞ」。「酒はさけ、飯はめし」。「さて、『ともに』は」と問はれ、「椀(わん)・折敷でござあらうまでよ」と。
一 いろはをもよまぬ者ありて常に人の酒飯(しゆはん) といふは何事そや酒はさけとよむ飯はめしと/n3-16l
よむそ忝しと覚ある振舞の座にて今日の もてなしは酒飯(しゆはん)ともに出来まいらせたとほむる かれかそだちをよくしりたる者有酒飯とはなん ぞ酒(しゆ)はさけ飯(はん)はめしさてともにはととはれ椀(わん) 折敷て御座あらふまでよと/n3-17r