醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
都一条あたりにて、中間(ちうげん)、夜に入り、寝入り居ける間に、ちやくと長刀を取りたり。目覚め肝を消し殿を呼び出だし言ふやう、「ことのほか盗人がはやる体に候ふ。刀の用心を召されよ」。「まづ、おのれが持ちたる長刀を失はぬやうにせよ」。「されば、その長刀をとくに取られて、それに仰天し参りて申す事よ」と。
一 都一条あたりにて中間夜に入ねいり居ける 間にちやくと長刀をとりたり目さめ肝を けし殿を呼出しいふやう事の外盗人か/n2-36r
はやる体に候刀の用心をめされよまつをのれが もちたる長刀を失はぬやうにせよされは其 長刀をとくにとられてそれに仰天し参り て申事よと/n2-36l