醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
盗人にあひて、「これはどちの方(はう)より、如何体(いかてい)の者の仕業ぞ」。「いかさま、内より引き手ありや」と種々讃嘆ある所へ、こざかしき者ふと来たりて、「この盗人に入りたる者こそ、わがよう知つた、知つた」と言ひけるまま、「何者ぞ、きかせてたべ」と、あなかちにわびければ、そとささやきて言ふやう、「この盗は、ものが欲しさに入りた」と。
一 盗人にあひてこれはどちの方よりいかていの 者のしはさぞいかさま内よりひきてありやと 種々さんたんある所へこさかしき者ふと来 りて此盗人に入たる者こそわかようしつた しつたといひけるままなに者ぞきかせてたべ とあなかちにわひけれはそとささやきていふや/n2-32l
う此盗はものかほしさにはいりたと/n2-33r