醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
脇(わき)に出る大夫、楽屋にて目に仏を失ひ、物をたづねまはる風情あり。人みな不審し、「何が見えぬぞ1)。ともどもたずね見ん」と言へども「いや、ちと物が」と秘所(ひしよ)して言はず。
ありありて後、「ただ今ここに置きたる烏帽子が無い」と。「そちが頭(あたま)に着てゐるは」と笑ふ時にぞ、探り見て、「まことにけんようもない所にあつたよ」。
一 わきに出る大夫がく屋にて目に仏をうしなひ 物をたつねまはる風情あり人みなふしんし なにが見えぬぼともともたつね見んといへとも/n2-29l
いやちとものがと秘しよしていはすありありて のち唯今爰におきたるゑほしかないと そちかあたまにきてゐるはとわらふ時にそ さぐりみて実にけんようもない所にあつたよ/n2-30r