醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
下手なる長談議の席に、齢(よはひ)五十に余る女房、帷(かたびら)をかづき、聴衆みなみな立ち去れ、つひに一人立たず居たり。
長老、高座より感じて、「讃めん」と思へるとき、かの女房、ただ今目覚めたる顔にて見上げ、「昨日の長老のまだござあるは」と。
うつとりが二人ある。1)
一 下手なる長談議の席によはひ五十に あまる女房かたひらをかづき聴衆みなみな たちされつゐに一人たたず居たり 長老高座よりかんじてほめんとおもへる 刻彼女房唯今目さめたるかほにて見 あけ昨日の長老のまた御座あるはと うつとりがふたりある/n2-26r